No.7

「目、つむって」
書き出しme.のお題/ソフィア視点

「目、つむって」
「断る」
 言葉の最後までしっかり聞くことなく答えると、その男は表面上だけはがっかりしたような表情をして見せた。
 この男の、こういうところが心底嫌いだ。上っ面だけで、中身の伴わない言葉や表情。
 初めて会った時から、この男が癇に障って仕方がない。
「何で? てか、もうちょっと考えてくれてもいいんじゃない?」
「考える時間が無駄だ。貴殿の提案など、ろくなことがない」
 いつまでもこの男の戯言に付き合わされるのは御免だ。できる限り早く逃げ出そうと席を立った。
 しかしこの男は、当たり前のようについてきては言葉を繋ぐ。
「ひっどいなー。そんなに俺って信用ないのー?」
「むしろ、貴殿の何を信用すればいいのかを訊きたいくらいだ」
 毎度のことながら、どれほど冷たくあしらってもこの男はへこたれない。根気強いと言えばいいのか、それとも馬鹿なのか。
 こんなことになるならば、もっと早く退室しておけばよかった。考え事に捕らわれていて、他の面々が退室していることに気づかないとは、一生の不覚と言ってもいいだろう。
「何を信用すればってさー……」
 ノブに手をかけ、やっと逃れられると思った瞬間、顔の横を青い袖が通り過ぎた。剣ダコのできた無骨な手が、目の前の扉を押さえつけている。
「何の真似――!」
「言っとくけど俺はソフィアだけは裏切らないよ?」
 怒りを滲ませて振り返ると、至近距離にシルバーグレイの瞳。銀糸の髪の間から覗くそれは、思いがけず真剣なものだった。
 と、思ったのも束の間、すぐにいつも通りのふざけた笑みで口元が歪んでいることに気づく。
 からかわれたのだ。ほんの一瞬でも、この男の言葉を信じそうになった自分の浅はかさが恨めしい。
「……だから貴殿は信用ならんのだ」
 乱暴に扉を押さえる腕を払いのけると、振り返りもせず私は会議室を後にした。

 金輪際、あの男の言葉を鵜呑みにしないと、心に誓いながら。畳む

#番外編

夢のあとさきそめし朝