2017年10月25日 この範囲を時系列順で読む この範囲をファイルに出力する
2017年10月24日 この範囲を時系列順で読む この範囲をファイルに出力する
『ヒース』
彼女が呼ぶ。
あの日々と同じように。
月色の瞳を柔らかく細めて。
屠った男の名を。
それがわたしを狂わせる。
「申し訳ございません」
主君に、ディトラウトは告白した。
「心を傾けました」
他者の印象を塗り替えんと筆を手にとるときこそ。
もっとも美しいあの娘に。
深く。
溺れるように――……。
マリアージュは開いた扇で口元を隠し、ふ、と嗤った。
「狸に似ておりましたの」
一身に視線を浴びながら、皮肉を込めて言い放つ。
「……私の生家の庭を荒らした、たいそう毛艶の良い……クッソ狸に」
イェルニ兄妹が目を丸め、ロディマスは女王の乱心に顔を引き攣らせている。
それが、おかしくてならなかった。
「冗談ですわ」
マリアージュは扇を閉じ、嫣然と微笑んだ。
衣装の裾を絡げてゆっくり歩く。
行く手を阻むメリアの眼前で一度足を止め、マリアージュは言った。
「お退きなさい。メリア・カースン。歩みの邪魔です」
気圧されたのか、彼女は大人しく道を開ける。
マリアージュはそのままゆったりと、絨毯を踏みしめた。
文官が露台へと続く扉を開く。
熱を帯びた歓声が、ぬるい風と共にマリアージュを一気に取り巻いた。
「私には力がない。だから助けなさい。貴方達が守り受け継いできた家と叡智が、私を助けることを信じます」
それは、女王候補者としての、演説ではない。
それは、女王が家臣に向けた宣下、そのものだった。
「私は祈らない」
マリアージュは宣誓する。
「誰に祈るわけではない。貴方達にこれまでと変わらぬ日々を。更なる研鑽と、繁栄を、私が約束いたしましょう」
「私の主が、真の意味で、国の主と、なるために」
「やはり私は、貴方が欲しい」
まるで、愛を告げているかのような。
直情的な声だった。
「すみません。勘違いされてもどうかと思うので言いますが、私は男色ではありませんから」
「ローラ」
ダイの前に立つマリアージュの声は、思いがけず鋭い。
腰に手を当てた彼女は、半眼でローラを見上げ静かに問うた。
「あんた、いつからこの家の主人になったの?」
「ディアナ」
呼びかけられ、上げた視線の先にあるヒースは、それこそ春先の陽のような、とてもとても、優しい微笑みを湛えていた。
彼が、囁く。
「呼びますよ。貴女が望むのなら……何度でも」
偽りのない。
本当の、名前を。
ヒースが何気なく手を差し出してくる。首を傾げながら手を取った瞬間、勢いよく身体が引き上げられた。
大きさ比べもおしまいだ。そう思って戻しかけたダイの手を、ヒースのそれが引きとめた。
男の指が、ゆっくりと、自分の指の間を滑る。
組み合わされていく、手。
「……ヒース?」
彼は目を伏せ、その親指の腹でゆるゆると、ダイの手の甲を撫ぜている。押さえつけているわけでもない。擦るというにも少し違う。羽で表面を撫でるような、柔い感覚。
何かが、じわりと、身体を侵食していく。
肌が、さざめくような、痺れ。
今まで経験したことのない感覚に、ダイは息を詰めた。
「本当に」
ヒースの唇が、動く。
「どうしてこんな小さな手を」
伏せられていた蒼の双眸が、ゆっくりとダイを捉える。
「男のものだと思ったり、したのだろう……?」
囁かれる自問。
く、と細められる目。
改めて思う。
ヒースはひどく、綺麗だと。無論、容貌も端整だが、それ以上に、その目が。
永遠に続く、白砂の原野の空の色に似た、透明で深い、静かな蒼。
その瞳に、捕らえられる。
上手く、呼吸が、できない。
「……は」
男の手は離れない。その親指は輪郭を確かめるようにダイの手の甲を滑っている。
「ミゲルの店に行きましたよ。あなたが来る予定など何もないと彼は言った。……ならこんな場所で人目を忍ぶようにして、貴女は一体何をしている?」
いつもはダイに対して穏やかなヒースの声音が、珍しく怒気を孕んでいる。
一言一句、全てに憤りを込めるようにして呻く彼の目を、ダイはまともに見ることができなかった。力なく、項垂れる。
「へぇ、よく言うよ」
残像から逃げるように視界を暗闇に閉ざしたヒースの耳に、揶揄するような医者の声が届いた。
「アリシュエルの手紙をダイから受け取っているとき、踏み込んできた君の顔、鏡で見せてやりたかったね。実に見物(みもの)だった」
「……見物?」
「色々御託並べてダイに説教していたけど、あの時の君の顔は、嫉妬に眩む男の顔そのものだった。恋人の浮気現場に踏み込んだ男の顔だったよ。嫌われてもいい、だなんて、あんな顔しておいてよく言えたものだ」
2017年10月10日 この範囲を時系列順で読む この範囲をファイルに出力する
※こちらは以前の感想ブログに載せていた記事の転載です。
こんにちは。
もっと早く続き書くつもりが、諸々のことを処理していたらこんな時間になってしまいました。
本日も女王語りのお時間になりましたよ。
では、早速本日も語彙力皆無で逝ってみましょう~!
昨日ね、Twitterで朔さんが悪魔のささやきを私に向かってしたんですよ(真顔)
これね! これね!!! 結構前にRTで流れてきて知ってたんですけど、私すっかり忘れてたんですよ!!!
……見事に私は瀕死になりましたよええ。
さて、問題のシーンは昨日語った第二弾とも被るんですけど、
こ~れ~で~す~よ~!!! これ!!!
普通の舞踏会だと、お相手は選べるわけだし誰をラストダンスの相手にするかは自由なわけですよ。普通ならね!
けれど、これは二人が意図したわけでもなくて、また他の誰かが意図したわけでもなくて、自然とそうなったわけじゃないですか!
つまりはあれですよ。神の思召しですよ。二人が! 伴侶となることが! もう運命づけられてるってことですよ!!!! ねえ!? 花鶏神!!!(笑
あとあと、昨日はタイムオーバーで語れなかった部分なんですけども。
この後のね、ディアナさんとディータさん、それぞれについて。
昨日語ったディータさんの「心を傾けてしまいました」発言のその後、セレネスティが退場して、気遣うゼノさんにずっと「私が悪い」と言い続けるディータさん。
そして二人の逢瀬をマリアージュ様に対しての背信だと思い自分を責め、初潮を迎えて自分の中の女に嫌悪感を露わにして謝りながら泣き叫ぶディアナさん。
二人ともが二人とも、許されない恋をしていると思っている。
本当にもうね、これね! ゼノさんの一言に尽きますよ!!!
そうだぞゼノさん! もっと言ってやれっ!!!
そして、こんな風に言ってくれる友人がいて良かったね、ディータさんっ!!!
ゼノさん好き……。
てかさー、何気にディータさんとかレオニダスさんとかさ、ディータさんのこと大好きやん? そんでもっていい人達やん? そんなディータさんが悪い人なわけないやん?
だからさ! ディータさんはたまには自分の幸せについて考えてもいいと思うんだ!!! レオニダスさんの分もさ! 幸せになれよぉぉぉっ!!!(思い出し号泣三度目)
この後、ディータさんはそれでもゼノさんが許してくれても自分が許せないとかほざいてますけどねぇぇぇ!!!
ゼノさんは……大切な友人の心の傷を塞いであげたかったんだろうなぁ……。
一方、ディアナさんのね、あの泣き叫ぶ姿……。
マリアージュ様はディアナさんとディータさんが何してたのか想像ついてるんでしょうけど、何も責めない。マリアージュ様が責められるはずがないんですよ。背信だなんて一切思ってないんですもん。絶対に思ってないですもん。
むしろディータさんに責任持ってちゃんと嫁にしろって思ってますもん。くっそエロ狸!とかは思ってるかもしれませんけども。
でも、ディアナさんは自分が許せない。恋をした自分が、どれほど突き放されても好きでいる自分が、求められて応えてしまった自分が。
そして、ずっと止まっていた体が少しずつ動き始めていることは知っていたけれど、『月の障り』という完全に『大人の女』になろうとしている自分に、恐怖している。
これね、このディアナさんの恐怖ね、お母さんの呪いじみたものを感じるんですよね。
お母さんが父を愛するあまりにディアナさんを『ダイ』にしてしまったこと。
狂ってしまうほど父を愛していた母を知っているから、ディアナさんは『ダイ』でありたかった。これが最初の呪い。
そして、求めてはいけない(と思っている)ディータさんに恋をして焦がれて、心が完全に女として成熟し始めるのに合わせて、身体までもが大人になっていく。理性ではマリアージュ様を裏切れないとわかっているのに、心も体も、本当に全身全霊でディータさんを求めている自分。
それが、恋に狂った母と姿だけでなく中身まで似ている。自分もああなるのでは、恋に狂って愛しい人以外何も投げ捨ててしまうのではないかという恐怖。血からは逃れられないんだとディアナさんの恋心を縛りつけるもう一つの呪い。
あのね、違うんだよ。ディアナさんは幸せになっていいんだよ。
確かにディアナさんとディータさんでは立場的に色々と難しいんだけども。
恋しちゃ駄目なことないんだよぉぉぉっ!!!
だってさ、ロディマスさんとかさアッセさんとかはさ、国の立場からディアナさんのことは許せないと思うよ? まあ、アッセさんの場合はそれだけじゃないけども!
セレネスティが許せないのだってわかりますよ? ついてくるって信じてた人が私情に走って自分を謀ったのだから。
でも、本当にずっと二人の傍にいて良く理解しているマリアージュ様だとかゼノさんとかはさ、ぶっちゃけられないだろうけど心の中では二人が一緒になってほしいって絶対思ってるもん。
だからね、幸せになっていんですよぉ!!!
すみません、何かすごい中途半端なんですけど、色々確認するために花鶏さんのサイトに飛んでたら、企画のとこにあるSHORT STORIESやBACKYARD読んでないことに気づいて、全部女王に関する小話読んでたらまた時間なくなっちゃいましたよ;
もうお迎えの時間なので、とりあえず一旦切りまする。
まだまだ言いたいことありますけども。
感想書きながら本編読み返したり、そこでまた泣いたり、上記の小話たちを読んでニヤニヤしたり切なくなったり、ほんと忙しいですわ。
あ、あのね、ここで言うのも何なんですけどね、私基本的にそんなに感想とか垂れ流さない人なんですよ。苦手なんですほんと。
でもたまーに言わずにいられなくなる作品とかありまして。
まあ、それがこのブログに感想置いてあるお話たちだったりするわけですが。
ほんと、女王は吐き出さないとつらくて吐き出してます。
もうずっと、読んでからここ数日ずっと苦しいです。
早く幸せになってほしい。
てか、版権でもここまでどハマりすることそうそうないですからね?
歳食ってから(子ども産んでから?)は余計に。
本っ当に自分の心を占めてやまないお話なんて数えるくらいしかないんですよ。
その一つに久しぶりにぶち当たっちゃったんで、一気にきてますね、色々と(笑
軽率に現パロ妄想とかしたくなりません?
あ、あと、女王の設定資料集とかめっちゃ欲しいんですけど。
国と国の関わりとか、聖女と騎士の話とか、もちろんキャラの詳細プロフィールとか相関図とか。完結したら作りましょうよ花鶏さん! 私買いますから!!
いやむしろ完結記念にファンブックとか作りましょう。好きな台詞ランキングとか好きなシーンランキングとか、ヒースさんのエロいシーンランキングとか(笑 そんなのを! 語り合える人! 募集!!(あ、朔さんはもうそういう人に入ってますからね)
って、何の話になってきたのかよくわからないので、ほんとに一旦切ってお迎え行ってきます!!!畳む
#オンノベ感想